火曜日, 2月 28, 2006

おぉお? すっげ!-RPGシステム論-

あるところで凄い論文を見てしもた。
念の為申し添えるがこれはゲームデザインとかする人や、そういうものを色々と分解して撫で回して弄繰り回すの好きな人向けの文章で、一般の「ゲームプレイヤー」が見ても余り面白いもんではないと思う。そういうのが好きな人だけ読むと良い。タクやんにも読ませたいが、これをきっちり翻訳して彼に読ませるのは大変だろうなぁ…がんばれー(謎)

しかし余りにその内容がここの所私がやってきた「Pub40案の問題点」に通じる部分を持ち、恐らくはMrTactやその他のUOerも持ちえていない視点だと思うので、あえて紹介する。

RPGのデザインと言うのは、実際のところ「行為判定ルール」だけで決定される訳ではない。
RPGが物語るシステムである限り、それがどんな世界観を構築するか、そしてそれをどの様に実装するかと言う事は「常に考えねばならない」部分なのである。
例えば、良くそこらに転がってる「俺様主人公がなんか物凄い技を使って世界を救っちゃうよ?!」系ジュブナイル小説の世界観を再現するには、セブンフォートレスなどの「ぶっ飛んだ世界観に合致するシステム」が最適である。仮にどっかの誰かが「セブンフォートレスのシステムはパワーのインフレが発生しやすいので、中身のシステムはロールマスターに挿げ替えたいと思います」等と言うと、結局数値のインフレーションは適切な値に収まるかもしれないが、ゲーム全体(総体)が目指したものが見失われてしまう。セブンフォートレスはあくまで「俺様主人公のジュブナイル小説」を再現する為にメカニズム及びポリシーが決められているものであり、そこに厳密戦闘とリアルさの再現を「ポリシー」として定めたロールマスターのシステム組み込む事が「そもそもの間違いの元」なのだ。

MrTact私案はこの「ポリシー」を無視してメカニズム部分にだけ手を入れようとしている様に見える。
散々「私はMrTactの目指す地平が理解できない」なんて言って来たんだが、要するにこれは「メカニズムに手を入れるのは良いけど、結果どの様な「システムポリシー」を定義するのか?」と問うて居た訳ですな。
現在のUOシステムは良くも悪くも「アイテム依存部分が大きい」と言うメカニズム的な問題点がある。そして…それがシステム主導で行われてきた為にシステムポリシーなどと言うものはどっかに置き去りにされているのだ。或いはシステムメカニズムが後押しして「システムポリシーを形成した」と言っても良い。新たに追加される要素も、追加された要素も…一切ポリシーを省みる事が無かった。それが現在の混乱に繋がっているのではないか? それなのに今また「大きな変革」を行おうと言うのに開発陣は「システムポリシーそっちのけでシステムメカニズムだけ大きく入れ替えようとしている」 これは結果的に同じ過ちを繰り返す可能性が高いだろう。

まず、どの様な世界を目指すか…システムのグランドデザインである「システムポリシー」を定義するべきなのだ。ある所では「毎日出来たら知り合いの鍛冶屋に作ってもらったHQ鎧でダンジョンに潜り、たまに魔法の武器で強い敵と戦ったり」と言う「システムポリシー」を提示した人が居るが…
ポリシーが決まれば、メカニズムを決定できる。
仮にここで「魔法の武器防具は普通に修理できない」としたらどうだろう? そうする事で魔法の武器防具の寿命を縮め、HQ鎧の有用性を上げる事もできるだろう。
或いは「魔法の鎧は単純にステータスボーナスなどが付与されたエンチャンテッドNQ鎧で、抵抗値は職人の作った鎧の方が高い(魔法のボーナスに属性抵抗値のボーナスを入れさせない)」等と規定すると…魔法の鎧を着た奴は属性抵抗低いけど色々とステータスボーナスの恩恵を受け、HQ鎧愛好者は属性抵抗値は高いが一切のステータスボーナスを受けない…こんな住み分けが出来るかもしれない。(そうすると、今のNQ/HQだけの区分けではかなりのっぺりした感じになるので、作成物のランク分けをもう少し細かく再分化した方が良いかも) 無論魔法の物品はアイテム強化不可能な方向性で。
もう一つの作戦として…リネージュのような底なし強化と言う手法もある。勿論強化を繰り返す毎に破壊確率は増す…結果として多くの魔法の武器防具は底なしの欲望によってどんどん破壊されていくだろう。
うむ、二虎競食の計であるな(笑)
(ついでに高強度の装備は修理難易度がバカみたいに跳ね上がると言う仕組みを組み込めば、結果としてその「とんでもない装備」がいつまでも残るという問題を回避する事も可能だ)
高強度の強化を行う為に特殊でレアな素材が必要であるとするなら…ゲーム世界内の資材を減らす効果も期待できる。

さて、そういう事を色々と考えた後に、タクやんの「習熟度」案だが…
正直、個人的には微妙だ。これを押し進めるとGMボーナスと同じことになるんじゃ無いかと…と言うか、GMボーナスって基本的にはタクやんの「習熟度」と同じ発想から来てるんじゃないのかなぁ?
少なくともシステムだけ切り取ってみれば以前の案より判りやすく、「見通しのよいシステム」となるだろうが、これにしても「どういうポリシーでシステム定義するのか」と言う視点が欠けている為、今ひとつ釈然としない。(先に言うておくが、アイテム依存からスキル依存への方針変更と言うのは、実際のところシステムポリシーと何ら関係の無い…或いは極めて関連性の薄い部分である。AFからパワスクに市場のメインターゲットが移るだけの話じゃなかろうか?)
まぁ、スキル方面への依存度上げるなら、スキルはもう少し「上げにくい」物にしないとだめだろうな。
育成期間が短く、すぐにPvPに移行できるとして…もしも本当にPvPがUOに残された最後の楽しみになると言うのであれば、それに飽きたらもうUOやる意味無いのと同じ事になる。

実際問題、Pub15時代が最高だったとか、懐古しちゃう人は結構居る。
私はいつも不思議に思うのだが
…例えばPub15が最高でPub16が全てを台無しにしたと仮定しよう。
では何故Pub16は導入されたのだ?
15が最高なら最高でも良いのだが、何故にPub16と言う改変が企画され、実行されたのだろうか?
もしもPub15が最高であったならPub15の良さを得々と語るだけではなく、何故Pub16が企画されたかとか、Pub16の目指した「Pub15で存在した問題点の改善」を別アプローチで考え、Pub16’ターボとか考えないといけないのでは無いか?
そういう考えも無しに単純にPub15を再適用したとしても、結局歴史は繰り返すだけなんでねーの?
良かった点を考えるだけではなく、悪くなった「分岐点」をよくよく見て、次回は正しい選択ができるようにしなければいけないのでは無いか。


さぁ、俺らのブリタニアはどの辺に漂着するのでしょうか?

4 件のコメント:

  1. はじめまして、Vampire.S というものです。テーブルトークRPG以外の方から反響をいただけるとは予想外で、大変舞い上がっております。

    その上で。実は、Vessel さんからコメントをいただくまですっかり失念しておりましたが、「メカニズムとポリシーの分離」という概念自身は私のオリジナルなものではありません。これは、元もとがオペレーティングシステムなどの、システムエンジニアリングにおける基本的な概念でして、仮に私にオリジナリティがあるとしましたらそれら一般のシステム論において用いられている概念を RPG という分野に適用してみた、というところにあります。

    その点、参考文献を挙げ損ねていたのは私のミスであり、本来もっと適用範囲の広い概念をわざわざ TRPG という酷く特殊な分野の前提知識を必要とする形で提示してしまったことに、心から謝罪申し上げます。

    以下に、コンピュータシステム論における基本的な教科書からの引用を掲載いたしますので、ご参考にでもなれば幸いです。

    ### 引用開始
    一つの重要な原則は、ポリシーの、メカニズムからの分離である。メカニズムとは(ある目的が与えられたとき)、それをどのように実現するか、を指す。一方、ポリシーとは、何をなすことにするかを決定することである。

    ……(中略)……

    ポリシーとメカニズムの分離は、柔軟性の観点から重要である。(そのとき求められている) ポリシーは、多くの場合時と場所に応じて刻々と変化しており、最悪の場合においては、ポリシーの変化はそれを支える全メカニズムの変更を要請する場合もある。

    ### 引用終了
                  ??“Mechanisms and policies”
    “Mechanisms and policies”, System Design and Inprementation, p. 79. in: Abraham Silberschats and Peter Baer Galvin, Operating System Concepts, Addison-Wesley Publishing Company 1998.

    私のミスでお手数をおかけいたしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

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  2. おおおおおおお?!
    元T-RPG方面の人ですけど最近はMMORPGの人のVesselです。

    詳しい話は端折りますが、なんか最近UOと言うMMORPGのデザイナー達がゲームのバランスなどを一新しようとしているのですが…個別の数値を弄繰り回す事にばかり執着しててなんかおかしい。それでいい感じにシステム再構築できるのか? 等と漠然とした不安を感じていた所、非常にわかりやすいシステムデザインの話が出ていて…思わず納得と言うわけです。
    いやいや、元ネタまで開示して頂き恐悦至極! すんませんでしたー!

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  3. 一般に、一度作ったゲームのシステムって(TRPG に限らず)改訂には躊躇するものですから、パラメータチューニングでお茶を濁そうとするのは致し方の無いところではないでしょうか >MMORPG

    ただ、私の書いたモノで、一般のシステム論と異なる視点は「ゲームって、娯楽だから飽きるよね」というところでw ここは、おっしゃる通り MMORPG にも必要な観点ですよね。もし最初からそこまで見越した人が設計に携わっていた場合、最初から拡張性の在るシステム設計(例えパフォーマンスが出にくくとも、敢えて完全なオブジェクト指向プログラミングで通して、動的な機能実装を容易にしておくなど)を強く推奨するでしょうから。

    ただ、個人的にコンピュータにその辺を頼るのは結局のところは筋悪な方法論だと思っております。

    というのも……十分に機械的だからこそコンピュータに載せることができるという事実があるわけです。ところが、一般に人間はそこまで機械的なものに対して興味を持つ場合、シミュレータとしての興味を持つので、要は箱庭としての楽しさが問題になります。

    つまり、Sim City をどうやって長く楽しめるかを考えるとすると……まぁ、新しい施設(原子力発電所等)を追加する、とか、あるいは災害の種類を増やしてみる、とか……結局、グランドデザインの際に既に定まったカテゴリーの中の、データとしての余白を一つ一つ列挙的に潰していく話になります。TRPG 的用語を使うなら、データを追加するサプリメントを出版して、ルールは変えない、となるでしょう。

    実は、TRPG 業界には長く「サプリメント売り上げ半減の法則」なるものが存在しておりまして、一つサプリメントを出すと、次は半分しか売れない、というものがあるんですね。おおむね、ゲームがビッグになっていくと、(サプリメントを作るための努力はあんまり減少しないのに)サプリメントを追加して得られる利益が減少します。

    これは、飽きられるという理由もありますし、同時にユーザーが新しい遊び方を自分で開発してしまう(拙稿で論じております、「ポリシーはメカニズムより高速に変遷する」という経験則の、別の形ですね)ので、サプリメントを必要としなくなるということでもあります。

    では、どうすればうまくいくか。

    私見ですが、どうせ人間がり出す「新しい楽しみ方」をコンピュータ側が予測することができない以上(*1)、人間がゲームに介在する余地を残しておくのがいいかな、と思います。

    例えば、チャット機能の実装であるとか、あるいはグループウェアとしての機能、さらにはユーザーによるミッションなどの設計を、許容する。

    結局、人力に頼るのであれば、楽しんで労力を払っている人たちの楽しみを、コンピュータを使って他の人にも共有可能な形で提示する(*2)方が、きっと良いと思っているのですが……尤も、MMORPG も結構大きな分野ですし、専門外の私でも考えつく手法はとっくに議論されているのでしょうけれどもw


    *1: これができたら、つまり我々は真の意味での人工知能を作り上げたというわけですねw

    *2: 例えば、検索エンジンというのは人工知能から発達した非常に強力な分野ですが、ここで最強のエンジンである Google は、つまるところ個々の人間が作ったリンク構造を読み取って、それを表示しているだけ、です。何も人工知能的な意味での「理解」はしていないわけですねw このように、コンピュータプログラムは「既に人様がやってしまった処理」をなるべく多くの人と共有する、という方向性で設計した方が、無理なく美味しい結果が得られるという経験則があります。割に、作ってる方としてはションボリするんですけれどw

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  4. 人力関与形式は…今までの経過を見ると余り上手く行って無い模様。みんな「GMの苦労を味わいたく無い」と言うのが本音かと。
    そんでシステムが色々と「供給する」形式に変化していったのですが、やはりこれは色々な意味で限界が見えてくる。

    供給側も(恐ろしい事に)システムデザインポリシーとその実装方法(メカニズム)を十分に了解していないのではないかと言う疑念がありまして、その場その場でかなりテキトーな追加要素入れてるんですよ。ある意味ではスペルジャマー的なものが追加されている。
    それを全て受け止めつつ、数字弄ってバランスしようとするのでなんか良く判らない形式になってるのかなぁと。
    正直、D&DやRQの様に改訂版出せれば良いんですが…予算やマーケティングの問題からそれは中々ふんぎれ無いご様子。

    かかる金のでかいシステムは大変だ…

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