木曜日, 12月 14, 2006

ギムレットには早すぎる

何故にこげな検索ワードでこのページに到達したのか、全く以って意味が良く判らんのだが、折角なので「ギムレットには早すぎる」と言う台詞の意味を読み解いておこうと思う。

その一 作品
「ギムレットには早すぎる」と言ったら、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」(ハヤカワ ミステリ文庫だっけ?)であろう。それ以降にこの台詞を使った物語があるのだとしたら、多分それはマーロウ(上記の小説の主人公 私立探偵)にイかれた作者がリスペクってオマージュなのであろう。
かいつまんで話すと、長いお別れってのはこんな話。
ものすごい呑ンべぇで金持ちのおっちゃんとひょんな事から知り合いになったマーロウ。彼も酒飲みなので、いつの間にか仲良くなる(その時に彼と飲んでたのがギムレット。それが後への伏線になっている)。その後この金持ちがド偉い目に会って家から逃げ出す事になるのだが、マーロウは酒飲みの友人の為に一肌脱いじゃう。
その後色々ありまして…逃げた筈の呑ンべぇオヤジが整形してマーロウの前に立つ。彼の整形を見抜いたマーロウがその辺つつくと、彼はこう言うのだ「ギムレットには早すぎるね」


その二 意味
直接的な部分では「バレてたか。そうだよ俺だよレノックスだよ」と言う意味であろう。
ギムレットはマーロウとレノックスが共に酌み交わした酒であり、二人の思い出のメタファーになっている。だからこそレノックスは「自分の遺書」にヴィクター(彼らがよく行ってたバー)でギムレットを呑み、コーヒーを沸かしたら一杯入れて、その横に火をつけたタバコを置き、全てが済んだら忘れてくれ…などと書くのだ。
忘れてくれとか言われても、こんな儀式じみた事をやらされたらギムレットを飲むたびに、コーヒーとタバコを用意するたびにレノックスを思い出してしまいそうではあるが。

たった一杯の酒で遠い昔の事を懐かしく思い出す…レノックスはマーロウに自分をそんな人物として記憶していてもらいたかったに違いない。思い出すのは常に静かなヴィクターのカウンターとギムレットとどうと言う事のない、他愛の無い会話。
しかしマーロウの中でレノックスはそれほど軽い人物ではなかった。
ギムレット(=楽しい思い出)にするには、早すぎたのだ。もっと…10年20年経てば懐かしく思い出される程度になったのかもしれない。何故早すぎたか・・・レノックスにとっても、マーロウにとっても、相手は十分に重かったのだろう。

さらっとした会話。
軽薄なトーク。
シンプルな思考。
だのに重い、彼らの友情。

小粋な男たちの友情物語が、この「長いお別れ」の主題であり、それを象徴する飲み物が(普通に知られているレシピより甘い)ギムレットなのだろう。
そう考えるとドライ ジンとライムジュースを半分づつ入れる…というレシピにも納得が行くような…



・・・・いや、流石にそれは甘すぎだと思うよ、レノックスさん!

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