日曜日, 10月 23, 2005

・・・・・・・ぇ?

ちょっとネクパラ論のところで色々物議がかもされているので、それに対する一つの自分の答えとしてお蔵入りさせてた文章を復活させてみる。煽り部分とかが少し過激気味なのでボツにしたんだが…その辺色々と意を汲んで頂けるとありがたい。
ファンタジーとはなんぞやっ!
それは「人間」が勇気を持って「怪異」に立ち向かい、「困難を克服する」物語であるっ! 時に理不尽な「魔法」に対してそれにあがらう我等の分身、剣持ち敵と対峙する人間の物語であるっ!

良く言われるファンタジーワールドと言うのは、実際の所この様な物である。構造的な部分では結局の所よくあるお話と変わらないのである。
こう言うと「バスタード!は魔法使いが主人公じゃないか!」「スレイヤーズはどうよ?」と言い出す輩が出て来るので先に釘打っておくが、これはあくまで比喩である事をご承知願いたい。
バスタードのダークシュナイダーは得体の知れない「魔法使い」として数々の困難と闘っている訳ではない。彼は超絶美形で凄い魔力を持っているが、あくまで不完全で感情のある「人間」として困難に立ち向かう。人間であるからこそ彼は境遇に(たまに)苦悩し、喜び、勝利する。
或いは指輪物語を挙げる者も居るだろう。主人公は小さき者…ホビットである。
人間がゴンドールの王であったり執政の息子だったりする中で、フロド・バギンスは背負う物なきホビットであった。冒険より家でメシ食ってビール飲んで遊んでるのが性に合うホビットであった。力弱く、魔法の力も無い。レゴラスの様な弓の上手さ、ギムリの様な力、アラゴルンの様な鉄の意志も戦闘能力も無い。しかし、彼は世界の破滅を救う為に立ち上がり、「指輪」の魔力に抗する勇者であった。あの一行の中で彼は正に「か弱き人間」だったのである。
実際の所、ファンタジーだなんだと言っていても…人間賛歌なのだと思う。
魔法使いでもなんでもない「人間」が困難を克服するから、人々は感動するのだろう。物語を通じて感じる「感動」と言うのはある種の共感では無いかと思う。どんな物語でも主人公は「万能」ではない。万能では無いから苦悩し、努力の末に困難を克服する。
確かにLord of the Ringsの第三巻ではアラゴルンが実にいいタイミングで死霊を連れて形勢を逆転する。カッチョイイ。だがしかし、そこは「胸がスーッとするシーンであって感動するシーンでは無い」
悲壮感溢れるローハンの騎士達の「突撃」部分に私は心を動かし、涙した。
また、黒門前でアラゴルンが演説をする。既に戦略的優位性はなく…ただ単純に自分たちが死んでも小さき仲間が無事に目的を達する事を願い、明日のゴンドールの平和を願って「無駄死」する事を覚悟して声を枯らす。その部分にこそ感動を感じた。
最後の最後、サムがフロドを担ぎ上げたその言葉…あの言葉にもアラゴルンの演説並みの…或いはそれ以上の感動が詰まっていた。敬愛する者のみが背負う事のできる重荷。それを背負って今ここに潰れそうになっている自分の主人に対してなんと自分が無力である事か! だがしかし! 重荷を背負ってる貴方をそのまま…丸ごと私が背負いましょうと。貴方の背負った重荷に比べればなんと貴方の軽い事かと!(滂沱の涙)
何と言う主従の信頼かー(号泣)
人間の持つであろう「愛」の強さの一部を垣間見た気分じゃー(号泣)

人が何かを決意し、それを達成しようと巨大な難関にチャレンジする姿こそが感動を呼び覚ます。
その心の襞を感じ、彼の苦しみを自分の苦しみのように感じるから感動するのではないか。そして「人間って凄い」と思うから、人は物語を読んで勇気付けられるのだろう。
だからこそ、多くの物語では「人間」が主人公で魔法使いや異生物はバイ・プレイヤーなのである。
いくらガンダルフが強くても、賢明でも、彼は主役にならないし、なれない。ガンダルフは自分で「今は人間の時代である」と言う事を知っており、だからこそ「人間」が主軸となって世界の命運を決するべきだと思っているに相違ない。そして物語の構造上、物語出演者の中でかなり能力的に上位に位置する「ガンダルフ」は主人公になれない。
良くファンタジーを「ソーズ&ソーサリー(剣と魔法)」等と呼んだりするが、剣は主人公たる「人間」の象徴であると思う。ソーサリーは主人公に敵する物である。怪異と言い換えても良い。
およそこの手の物語の中で頭が一番ライトであろう「蛮族王コナン」でさえ悩むのである。剣やチョークスリーパーでダゴン殺しちゃう舐めてんのか的戦闘能力を有しておきながら、やはり彼も人間らしい一面を見せ、4歩下がってダッシュで10歩進み、11歩目で崖から落ちて100歩目ぐらいで崖上ってくる(かなりハチャメチャだが)人間らしい側面を見せながら物語を進めて行くのだ。本当に「悩まない」人間主役に置くと、物語はかなりしょっぱくなる。それは単なるバカのギャグ漫画に他ならなくなってしまうのだ。完全無欠の最強生物主人公に置くと、物語が平坦になってしまうのだ。(だから花の慶次は戦闘シーンが余り面白くないのである…劣勢でも平気で勝つからな…彼の物語が盛り上がるのは「個人の武力じゃどうしようもないピンチ」での彼の言動部分だろう)
そう考えると、一般的ファンタジーワールドで主人公張るのは誰かと言う問いに簡単に答える事ができるだろう。それはただの、その辺に転がっている、きったない顔した人間である。
キラキラした騎士の鎧が主人公じゃないんですよ。
伝説の魔剣が主人公でもないんです。
血筋や出身が主人公でもない!
すっごく勘違いしている人が居る様だが、多くの人々がその物語を聞き、感動し、涙するのは「最も自分に近いもの」の活躍である。貴族ではない。魔法を用いる怪しい連中ではない。王様ではない。異種族でもない。なんかケッタイな血筋の人間でもない。
普通の人間こそが、普通の人間に感動をもたらす「物語の主人公」なのだ。その「普通の人間と変わらぬ部分」が感動を呼び起こすのである。その他の部分は不純物であり、蛇足であり、雑多な部分と言う事も出来よう!
6000年生きてるエルフの心象風景を我々はリアルに想像する事ができない。
リゲルに住んでる触手付きドラム缶のトレゴンシーの心の琴線に我々が思いを馳せる事は出来ない。ドラゴンそっくりで強靭な肉体を持ってるくせに奴隷として扱われていたウィーゼルの一族の苦悩は中々判らない。(なお、私はレンズマンシリーズ大好き人間である事を付け加えて解説しておく)
逆にそう言う「全く異なる生物」の心の中身がまるっきり人間と同じだったらそれはそれで困るのだ。形だけなのかと言う話になってしまう。

いくらでも例を挙げることができる。
ステキ系お耽美系のなまっちょろい王様大活躍物語として有名なストームブリンガーでさえ、エルリックは強大な力に翻弄されて人間として(メルニボネの人として?)悩み、傷付き、ズダボロにされて、それでもなお生きる。困った事に死ねなくなってエターナる訳ではあるが、彼はひたすら悩んでお困り様になり続けるのである。
そりゃ確かにXXにも悩みはあるだろーさ。(某ウザスレで見たとあるページに感化されて書いたのでこんなことが記載されていたりもする)
亜人や特殊設定てんこ盛りの方々におかれても色々な悩みをお持ちでしょうや。
でも敢えて問う。その悩みはその特殊設定から本当にでてきたもんなのか?
XXなりの苦悩が導かれているならそれでもいい。それが他者に共感を呼び覚ます内容なら更にいい。でもそれって単純に人間に特有の…思うままに生きることが出来ない人間の悩みだったりしませんか? 私に言わせればXXだのなんだのの特殊設定部分は単純に情景描写で行数稼ぐためだけの「余計な部分」じゃねーかって話な訳で。
物語としては余計な部分だったりしない?

なんでもいい。
好きな物語もってこい。そして自分が感動したところに付箋張れ。
そして考えろ…それは特殊設定から導かれた感動か?
それとも単純に「人間としての苦悩とか、悩み」に起因する感動か?

ドガーンバキューンで敵をばっさばっさ斬り殺す部分に感動は無い。
苦しい時にどんな決断ができるか。そこでニヤリと不敵に笑う事ができるか。
そういう部分に感動は隠されている。最終的な苦労が報われるシーンは単純にエンドマーク出るシーンであって「そこに感動する訳ではない」
始めてドラゴン殺した時のことを思い出せ。
楽に倒せて感動したか? 悩んで灰色の世界に落とされて、それでもなお何度か戦い挑んで…その上で勝利を掴んで感動してないか?
そして感動したのはとどめを刺したその瞬間かと聞きたい。苦労した部分を思い出さなかったか?

人間、何か思い出すときになつかしく思うのは「苦労した時のこと」であって「喜びのその瞬間」ではない。その苦労した時の事を懐かしく思い出す事ができる連中こそ「主人公の資格」を有するもので、物語の主人公なのである。
特殊設定でゴテゴテやってる連中じゃないんだよと。
強い構成でどんなモンスターもバキバキ殺せる奴じゃないんだよと。
片手で禁呪、片手で魔剣持ってる人間でもねーんですよと。
粗悪な剣を手に握り、魔法は無いから根性だけを左手に掲げて泥に塗れている連中こそ美しい。
どうも右手に掲げた剣の輝きや、その下に堆く積まれた強敵の死骸に感動している者たちがいるらしい。
心の中に一つ輝くものを持っていれば、周囲にある同種の「輝くもの」の美しさを愛でる事ができるし、その輝き一つあればゴテゴテした修飾なんぞ必要ないと思うんだがなぁ。
自分で公開している戦技研でVesselの戦歴書いちゃったのも不味かったのかも。それをここに反省しつつ戦技研以前に動かしてた自分のサイトをここに紹介したい。初代Vesselがどんな風に生きていたか…それは戦技研よりもこちらに正確に記録されている。

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